ワールドカップ、メジャーリーグ、かつては高嶺の花であったスポーツ界の頂点で日本人選手が活躍することが珍しくなくなった今日、日本のトップアスリートの競技レベルは日本一ではなく本気で世界一を目指すレベルに向上してきました。

一方で、生活習慣病の予防、高齢化社会を迎えてのパワーリハビリテーションなど、一般市民の間でもスポーツは『観るスポーツ』から『参加するスポーツ』としてより密接なものとなってまいりました。

それに伴い、医療の分野においてもスポーツと健康を学術的に捉えるスポーツ医学に対する認識も高まってまいりました。

なかでも整形外科領域の医師はは骨折、靱帯損傷などスポーツで多発する外傷を扱っていることもあり、より中心的な存在としてその役割を果たしております。

整形外科の中でも特に一般整形外科知識と、スポーツそのものに対する理解、スポーツ障害・外傷に対する専門的なノウハウを統合した分野がスポーツ整形外科であると考えます。

私が行ってきたスポーツ整形外科

例えば野球をやっている小中学生が肘が痛くなって来院したとします。
多くの症例で肘内側の骨端核にレントゲン上の変化が見られ、野球肘、もしくは骨端線離開損傷の診断がつきます。
軽傷であればしばらく投球動作を休止することにより疼痛は軽減し、レントゲン上でも修復が見られ、治癒となります。
ここまでが一般整形外科治療です。

さて、この野球少年の肘は何故痛くなったのでしょうか?
これは上述のように『骨端核に異常を来たしたから』で正解です。

では、この少年の骨端核は何故異常を来したのでしょうか?
この答えがこの少年の肘が痛くなった根本の原因です。

つまり、根本の原因→骨端核の異常→肘痛となったわけで、これを解決しないとこの少年の肘痛は再発してしまうのです。

このような少年に実際に投球動作をしてもらうと、投球の基本動作が全く出来ておらず、ひどい投げ方をします。足の蹴り出しが悪く、膝と股関節のタメがなく、腰の捻転も全くなく、下半身を使わず、肩と肘だけで投げるいわゆる手投げです。
よく、『肘の使いすぎ』という言葉を聞くと思いますが、ほとんどの方は練習量が多すぎという意味だけに捉えていないでしょうか。実際には練習量だけではなく、全身動作で投球せず肩や肘だけに頼った『肘を使いすぎた間違った投げ方』をしている、という場合が大半なのです。
従ってこのようなケースの肘痛の根本の原因は投球動作であり、ストレッチングだけではなく、正しい投球フォームの獲得こそが最も大切なのです。
診察中に廊下に出て白衣のまま投球フォームを指導している医者は日本中探してもいないかもしれませんが、これが私の行なってきたスポーツ整形外科であります。